2020年9月9日

金子兜太の出版資料 

2020.9.9「金子兜太の出版資料」更新しました。
今日は、重陽の節句で「高きに登る」という日でもあります。
金子先生は、「高きに登る」という季語がお好きだった。 管理人竹丸

金子兜太略年譜リンク 詳しい略歴はリンク先へ


金子兜太追悼特集
兜太 tohta  VO11 VO12  藤原書店 
 
2018.9刊 1800+税

【創刊の辞】
創刊のことば  黒田杏子(編集主幹)/筑紫磐井(編集長)
創刊に寄せて――編集顧問のことば  瀬戸内寂聴/ドナルド・キーン/
芳賀徹/藤原作弥

【兜太の句、兜太のことば】
辞 世 コメント=黒田杏子
「なぜ戦争はなくならないのか」

【兜太レクイエム】
追悼 十二句
有馬朗人/安西篤/稲畑汀子/宇多喜代子/大串章/後藤比奈夫/高野ムツオ/
鷹羽狩行/中村和弘/深見けん二/星野椿/宮坂静生
兜太哀悼  佐佐木幸綱
金子兜太さんを悼む  関悦史/長谷川櫂/宮坂静生/金子眞土/黒田杏子
兜太追悼歌仙 爆心地の巻  連衆=宮坂静生・黒田杏花(杏子)・長谷川櫂〈捌〉

〈特集〉一九一九 私が俳句
金子兜太氏 生インタビュー(1)
〈聞き手〉黒田杏子 井口時男 坂本宮尾 筑紫磐井 藤原良雄

【兜太と時代】
誰にも見えなかった近・現代俳句史――虚子の時代と兜太の時代 筑紫磐井
三本のマッチ――前衛・兜太  井口時男
〈コラム〉大花火  下重暁子
     日銀と金子兜太  藤原作弥
     兜太さんの背中  澤地久枝

【兜太と先人たち】
詞に寄せて――伊昔紅、そして兜太  橋本榮治
兜太と草田男――共感と反撥と  横澤放川
まつろはぬ民の血――楸邨・兜太の原郷  中嶋鬼谷
兜太と珊太郎――月光仮面のように  坂本宮尾
〈コラム〉火星と国王と野糞  高山れおな
     春を吐く兜太先生  夏井いつき
     金子兜太氏が訴えた危機  窪島誠一郎

【兜太と世界】
海外における金子兜太の俳句について  
アビゲール・フリードマン(中野利子訳)
世界を魅了する「俳諧自由」[兜太と一茶、「俳句弾圧不忘の碑」、
そして兜太の国際性……]  マブソン青眼
TOTAL――紛争と国境を越えて[アンネ・フランク・ハウス財団
『兜太三十六句十二カ国語訳プロジェクト』]  伊東 乾
“存在”ひとすじに――金子兜太の生涯  宮崎斗士




2019.3刊 1800+税

「私自身、存在者として徹底した生き方をしたい。存在者のために生涯を
捧げたいと思っています」
(金子兜太) ――昨年98歳で他界した俳人・金子兜太の「現役大往生」の
秘訣とは?
〈編集主幹〉黒田杏子 〈編集長〉筑紫磐井 〈名誉顧問〉金子兜太
〈編集委員〉 井口時男/坂本宮尾/橋本榮治/横澤放川/藤原良雄
〈編集顧問〉瀬戸内寂聴/ドナルド・キーン/芳賀徹/藤原作弥
〈執 筆〉 小泉武夫/夏井いつき/下重暁子/上野千鶴子/宮坂静生
/いとうせいこう/河邑厚徳/マブソン青眼/細谷亮太 ほか
兜太をめぐる人々(2)

句集『百年』金子兜太

金子兜太最後の九句(2018年1月26日〜2月5日)

 雪晴れに一切が沈黙す

 雪晴れのあそこかしこの友黙まる

 友窓口にあり春の女性の友ありき

 犬も猫も雪に沈めりわれらもまた

 さすらいに雪ふる二日入浴す

 さすらいに入浴の日あり誰が決めた

 さすらいに入浴ありと親しみぬ

 河より掛け声さすらいの終るその日

 陽の柔わら歩ききれない遠い家


句集『百年』金子兜太  朔出版

発行 2019年9月23日

編集 「海原」俳句会・句集『百年』刊行委員会



◆内容紹介

2018年2月に、惜しまれつつ他界した俳句界の巨星、金子兜太。

2019年9月に生誕100年を迎えるにあたり、最後の句集(第15句集)が

ついに刊行。2008年夏から絶筆句まで、最後の10年間の作品をほぼ

収載した渾身の736句。

素っ裸の人間・金子兜太が俳句となってここに居る!


◆『百年』15句抄

昭和通りの梅雨を戦中派が歩く

初富士と浅間(あさま)の間青し両神山(りょうがみ)

裸身の妻の局部まで画き戦死せり

津波のあとに老女生きてあり死なぬ

被曝の人や牛や夏野をただ歩く

雲は秋運命という雲も混じるよ

白寿過ぎねば長寿にあらず初山河

科(しな)の花かくも小さき寝息かな

干柿に頭ぶつけてわれは生く

死と言わず他界と言いて初霞

朝蟬よ若者逝きて何んの国ぞ

戦さあるな人喰い鮫の宴(うたげ)あるな

雪の夜を平和一途の妻抱きいし

秩父の猪よ星影と冬を眠れ

河より掛け声さすらいの終るその日






「海程」と金子兜太  海程編集長 武田伸一

  俳句あるふぁ」2018春号から転載させて頂きました。

海程終刊号 2018/7

 海程編集長 武田伸一

  「海程」は、昭和三十七年(一九六二)四月一日に金子兜

 太を中心とする隔月刊の同人誌として創刊された。表紙 は、

濃紺一色の上部に海程と大きく白く横に抜き、右下に 創刊号と

小さく白く抜いている。


  この号の巻頭で、金子兜太は「創刊のことば」として、

 「われわれは俳句という名の日本語の最短定型詩形を愛し

 ている。何故愛しているのか、と訊ねられれば、それは好

 きだからだ、と答えるしかない。(略)ともかく肌身に合

 い、血を湧かせるからだといいたい。まず愛することを率

 直に肯定したい。(略)何よりも自由に、個性的に、この

 愛人をわれわれの一人一人が抱擁することだ。愛人はその

 うちの誰に本当のほほえみを送るか、それは各人の自由さ、

 個性度、そして情熱の深さによることだと思う。


(略)最高の愛し方は、。純粋に愛するということだ。愛人を 

 取り巻く、いわゆる俳壇政治なるものは、いつの世にも愚劣で

 あるが、いつまでも絶えることがない。われわれは、この

  政治や政略の外に愛人を置いてやりたい。俳壇政治を無視して、

純粋に愛してゆきたい、と願う」(以上、抜粋)と、俳句を愛人と

いう言葉に置き換え、述べている。これらのこと、「海程」創刊

から半世紀以上経たいまも古びていたいことに驚きを禁じ得ない。


また、この号で加藤楸邨は「僕はいつも人間が自分が生きたといふ

証明をするところに俳句が生き、俳句が生きるところにはじめて

結社なり雑誌なりが成り立つのだと考えてゐる。(略)兜太が兜太の

間に徹した句を詠み楸邨が楸邨の人間に徹した句を詠む

とき、始めてお互を尊敬しあふことができるのだ」とエー

ルを送っている。次号からも兜太より年配の村野四郎・岡

井隆・林原耒井・栗山理一・村上一郎など、ジャンルを越

えての助言が続き、また同年配の原子公平・沢木欣一、森


澄雄・石原八束・赤城さかえといったところと対談を行い、

独善に傾かないように心くばりをしている。これらは兜太

の交友の広さを示すとともに、好評の連載でもあった。

2020年9月8日

俳句四季 2017年(平成29年) 

 管理人のブログ「竹丸通信」にもお寄り下さい


俳句四季11月号・12号  大特集、100人が読む金子兜太 前編 後編




▼編集後記に「大特集・100人が読む金子兜太」は二号連続企画。

今月号で前編、次号で後編として、歌人の岡井隆さんを含め、延ベ

100人を超える皆さんに、一番好きな金子兜太さんの句を鑑賞して

いただいた。

一番多く取り上げられる句は「梅咲いて庭中に青鮫が来ている」だろ

うと予想していたら外れ、「おおかみに螢が一つ付いていた」。

今月号では六人の方が取り上げた。ちなみに私の最も好きな句は

「水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る」。井上弘美さんの鑑賞の

最後の一文に深く頷いた。 (佐)


▼二号連続の大特集「100人が読む金子兜太」のゲラを読みながら

感じたのは、金子兜太という俳人の茫洋として捉えどころのない大き

さであった。取り上げていただいた句は誰もが知る有名句から、その

筆者しか知り得ない一句まで色々だが、特集を読み通してみても金子

兜太とはこういう存在である、と定義できない、そんな底知れない

大きさを改めて感じた。   (佐)


管理人・竹丸(海程同人)

金子兜太アーカイブの資料として掲載させて頂きました。    

兜太は 2018年(平成30年)2月20日)に死去、俳句四季のこの1年前の

企画で歌人・俳人に鑑賞頂き先生も嬉しくご覧せなったでしょう。

皆様、ありがとうございます。

一番好評の「おおかみに螢が一つ付いていた」 の鑑賞をアップさせて頂きます。


                     浅沼 璞        

 おおかみに螢が一つ付いていた    兜太

 今年度の『連句年鑑』にはベテラン連句人による鼎談「金子兜太俳

句の連句的鑑賞」が掲載されている。各作品は三行書きにされ、その

付けと転じが語られていく。結論から言えばネガからポジ、暗から明

への転じが兜太的俳諧性のようだ。掲出句にも、絶滅種の狼から生存

する蛍への転じがみられる。そういえば兜太は自著『荒凡夫 一茶』

で「犬どもが螢まぶれに寝たりけり」の一茶発句を引き、俳諧的アニ

ミズムへの志向をみせていた。けれど同著では「原始信仰をあらわす

アニミズム」を「生きもの感覚」と換言し、「現代の概念」として受

け取りたいとも述べている。掲出句にはそんな作者の屈折した思いが

潜在していはしないか。俳諧的アニミズムとは別に、現代俳句として

の鑑賞もまた一方でなされることを、この句は望んでいるように思う。

 

                      大串 章

 おおかみに螢が一つ付いていた   兜太

 兜太には重厚な佳句が多いが、この句は簡潔で奥行がある。アニミ

ズムの単純化の極地と言ってよい。「狼」と「螢」の合一に兜太の産

土・秩父が想われ、「土がたわれは」の兜太が顕れる。

 掲句は『東国抄』所収の句だか、同句集には次の句もある。「小鳥

来て巨岩に一粒のことば」この二句は見事にひびき合う。「おおか

み」は「巨岩」であり「螢」は「小鳥」なのだ。蛍の火は「一粒のこ

とば」に他ならない。

 『東国抄』のあとがきに「わたしはまだ過程にある。母は二十一世

紀を百歳でむかえた」とある。金子兜太が長生きをして好きな本能と

遊ぶことを願う