2020年9月9日

句集『百年』金子兜太

金子兜太最後の九句(2018年1月26日〜2月5日)

 雪晴れに一切が沈黙す

 雪晴れのあそこかしこの友黙まる

 友窓口にあり春の女性の友ありき

 犬も猫も雪に沈めりわれらもまた

 さすらいに雪ふる二日入浴す

 さすらいに入浴の日あり誰が決めた

 さすらいに入浴ありと親しみぬ

 河より掛け声さすらいの終るその日

 陽の柔わら歩ききれない遠い家


句集『百年』金子兜太  朔出版

発行 2019年9月23日

編集 「海原」俳句会・句集『百年』刊行委員会



◆内容紹介

2018年2月に、惜しまれつつ他界した俳句界の巨星、金子兜太。

2019年9月に生誕100年を迎えるにあたり、最後の句集(第15句集)が

ついに刊行。2008年夏から絶筆句まで、最後の10年間の作品をほぼ

収載した渾身の736句。

素っ裸の人間・金子兜太が俳句となってここに居る!


◆『百年』15句抄

昭和通りの梅雨を戦中派が歩く

初富士と浅間(あさま)の間青し両神山(りょうがみ)

裸身の妻の局部まで画き戦死せり

津波のあとに老女生きてあり死なぬ

被曝の人や牛や夏野をただ歩く

雲は秋運命という雲も混じるよ

白寿過ぎねば長寿にあらず初山河

科(しな)の花かくも小さき寝息かな

干柿に頭ぶつけてわれは生く

死と言わず他界と言いて初霞

朝蟬よ若者逝きて何んの国ぞ

戦さあるな人喰い鮫の宴(うたげ)あるな

雪の夜を平和一途の妻抱きいし

秩父の猪よ星影と冬を眠れ

河より掛け声さすらいの終るその日






0 件のコメント:

コメントを投稿