■金子兜太最後の九句(2018年1月26日〜2月5日)
雪晴れに一切が沈黙す
雪晴れのあそこかしこの友黙まる
友窓口にあり春の女性の友ありき
犬も猫も雪に沈めりわれらもまた
さすらいに雪ふる二日入浴す
さすらいに入浴の日あり誰が決めた
さすらいに入浴ありと親しみぬ
河より掛け声さすらいの終るその日
陽の柔わら歩ききれない遠い家
句集『百年』金子兜太 朔出版
発行 2019年9月23日
編集 「海原」俳句会・句集『百年』刊行委員会
◆内容紹介
2018年2月に、惜しまれつつ他界した俳句界の巨星、金子兜太。
2019年9月に生誕100年を迎えるにあたり、最後の句集(第15句集)が
ついに刊行。2008年夏から絶筆句まで、最後の10年間の作品をほぼ
収載した渾身の736句。
素っ裸の人間・金子兜太が俳句となってここに居る!
◆『百年』15句抄
昭和通りの梅雨を戦中派が歩く
初富士と浅間(あさま)の間青し両神山(りょうがみ)
裸身の妻の局部まで画き戦死せり
津波のあとに老女生きてあり死なぬ
被曝の人や牛や夏野をただ歩く
雲は秋運命という雲も混じるよ
白寿過ぎねば長寿にあらず初山河
科(しな)の花かくも小さき寝息かな
干柿に頭ぶつけてわれは生く
死と言わず他界と言いて初霞
朝蟬よ若者逝きて何んの国ぞ
戦さあるな人喰い鮫の宴(うたげ)あるな
雪の夜を平和一途の妻抱きいし
秩父の猪よ星影と冬を眠れ
河より掛け声さすらいの終るその日
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