2019年2月21日

句集「月球儀」山本 掌(やまもと しょう)


山本 掌(やまもと しょう)
前橋生まれ オペラ、フランス歌曲の演奏活動。
1989年   俳人金子兜太と出会い、俳句を始める。「海程」入会。
1994-2000年金子兜太句、自作によるオリジナル俳句歌曲を花唱風弦〉と題し、世界詩人会議日本大会など各地で公演。
1996年  「海程」同人
2001年一  芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品として企画、構成、脚色する。「芭蕉座」と命名し、声楽、作曲、ピアノと語りによるくうたい語る[おくのほそ道])を公演。
2005-2007年「萩原朔太郎生誕120年」前橋文学館委員。
2006年一  個人誌「月球儀」を編集、発行。
2010年   芸術文化奨励賞(企業メセナ群馬)を受賞。

帯・皆川博子
御作、好きです。選びぬかれた表現も、その身にあるのも。

金子兜太
非常に奇妙な現実執着者、奇妙に意地悪い洞察者というか、
どこかひねくれたと思えるほどにその美意識は常識とは違っている。
混沌をみとどけていこうとする作者である。

目次
月球儀・ノスタルヂアー荻原朔太郎撮影写真
さくら異聞・双の掌・禽獣図譜・危うきは・偽家族日乗・非在の蝶・蝶を曳く・海馬より
空蝉忌・寒牡丹・寒牡丹ふたたび・俳句から詩へ

ノスタルヂアー朔太郎撮影写真

麦の秋破れし海図の少年期
影なくす唇(くち)に秋蝶触れてより
翼たためる馬かいまみし葡萄の木
霧といて霧を耕し霧となる
忌日まで草の結界泳ぎゆく
霧を裂きゆく言の葉を一花(いちげ)とし
翼たためる馬かいまみし葡萄の木

2019年2月19日

埼玉県皆野町・壷春堂医院に金子兜太句碑



 おおかみを龍神(りゅうかみ)と呼ぶ山の民  金子兜太
2018年12月16日建立

金子兜太さんの句碑建立を喜ぶ、おいの桃刀さん(左)と長男の眞土さん=皆野町で
 二月に九十八歳で亡くなった俳人金子兜太さんの生家である皆野町の「壺春堂(こしゅんどう)金子医院」の庭に、金子さんの句碑が建立された。十六日に除幕式があり、現院長で碑を建てた金子さんのおい・桃刀(ももと)さんや金子さんの長男・眞土(まつち)さんら関係者約四十人がお披露目を祝った。生家に碑が建てられたのは初めてという。

平成13年刊句集「東国抄」Ⅵ   狼の句が20句あります

暁暗を猪(しし)やおおかみが通る
おおかみが蚕飼いの村を歩いていた
狼に目合(まぐあい)の家人声(ひとごえ)
おおかみに螢が一つ付いていた
おおかみを龍神(りゅうかみ)と呼ぶ山の民
龍神の両神山に白露かな
龍神の走れば露の玉走る
木枯に両神山(りょうかみ)の背の青さ増す
龍神の障(さえ)の神訪う初景色
龍神に福寿草咲く山襞(やまひだ)あり
狼に転がり墜ちた岩の音
狼生く無時間を生きて咆哮
山鳴りに唸りを合わせ狼生く
山鳴りときに狼そのものであつた
月光に赤裸裸な狼と出会う
山陰(やまかげ)に狼の群れ明くある
狼の往き来檀(まゆみ)の木のあたり
狼墜つ落下速度は測り知れぬ
狼や緑泥片岩に亡骸(なきがら)
ニホンオオカミ山頂を行く灰白なり