2018年2月18日

句集「谷と村の行程」 白井重之(しらい しげゆき)

平成俳人叢書 定価2667+税

著者略歴 白井重之(しらい・しげゆき)
昭和12年 富山県立山町生まれ
昭和44年 俳人家木松郎先生を知る
昭和47年  「海程」福井勉強会で金子兜太師に初めて会う、「海程」5月号から投句
昭和49年 海程新人賞受賞
平成8年  句集『わが村史』刊行
平成9年  海程賞受賞
平成25年 富山県現代俳句協会会長
現  在   俳誌「海程」同人・「海程富山」支部長。
         みのり俳句会代表・現代俳句協会会員

帯より
田の中でぐらり青嶺の乱反射

いぐつもの谷を背後にした村での暮らしが長くなった
まことに狭い範囲に生きてきた人間が表現する
俳句どいう詩型は、私にとってもっとも
相応しいものだったと思っている   
「あとがきより」


自選十句

きょう我は桜鯛食す以下略す

僕は白雨がすきで祖霊あつまる

田の中でぐらり青嶺の乱反射

多羅葉に蛍がくるよ白蛾がくるよ

山百合の白は山人の褌(みつ)の白

青田あおし柩はしろし村の西

ネズミタケの西に孤独のツキヨタケ

咳の子の便所の四隅にさざ波

真宗信者美形なり雪掻す

あけぼのや丑年生まれに睨鯛(にらみだい)

          
春あけぼの泉の鳥は黄可せり

甲虫産みつぐ谷よ沙(すな) よ照れ

秋霖やにわとり抱く作務もあり

人帰れば連翹全き色なせり

丹(に) の馬が晩秋の波とあそびおり

母死後の通条花(きぶし)ほのかな昼下り

桐の木の静かなること百日も

なずな摘む青空無性にうれしさよ

山国の男は単衣で一片食(ひとかたけ)

雨と少年流域にあればきれい

黄金田の凹むところに妻を置く

秋の夜の臍性善説の穴ぼこよ

喪の家に犬猫鳴けり二月尽

春の虹潜水艦がのっと出る

わが秋のわが体内に千五百(ちいほ)の水

戦争後一途に稲籾干している

天の意(なさけ) 朴のの花をいただけり

からい去(い) ね三日月泣いてしまうかな

赤ん坊に産土の月のぼるなり

村の石臼を墓にしてねむりたし

水溢れてミヤマアカネが村に来る

二ン月やたらとちねの母陰画(ネガ) のなか

三十三才(みそさざい) 父を掠めて母へ鳴く

青麦はあおい陰毛(ほとげ) の印(しるし) かな

きつね棲む痩田の主(ぬし) は偏固(へんこ)もん

赤紙をだれもしらない寒暮かな

烏瓜熟れるにまかせ村無人

荒草を踏みゆく妻は露のまま

幾年(いくとせ)も火種はこびし妻に雪

雪兎死の明るさに耐えている

点滴はこころのかげる日に受ける

裸足で入る痩田の鯉を追うことも

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