2018年2月18日

句集『風あり』内野 修(うちの おさむ)


著者略歴 内野 修
1943年5月30日 埼玉県大里郡妻沼町(現熊谷市)生まれ
句集「単発機」『直登』
現在、「海程」同人、現代俳句協会会員、NHK学園俳句講座講師、
埼玉新聞「埼玉俳壇」選者

あとがき
一九九三年から二〇一二年までの二〇年間の作品の中から、各一年間の作品を二〇句ずつ選んで、四〇〇句をまとめて第三句集とした。
『風あり』という句集名は、自然とともにあるという人生観を表している。これからも自然とともにあり、人間(じんかん)にあって、俳句を作ってゆきたいと思っている。

  二〇一五年 晩秋           内野 修


日本人余分に笑ふみぞれかな     

寂しさの大きさ鹿の大きさに      (大台ヶ原)

蝶の目のらんらんと我の汗を吸ふ   (大杉谷)

藁塚と愛犬匂ふ日暮れかな     

母亡くて春の日ざしのありにけり    (母みまかる)

草刈ってきけいに刈って一休み

秋の夜のテレビを少し乱しけり     (NHK俳壇に出演)



凍て蝶の凍てきれぬもの死ににけり

風花や木がしつかりと岩つかむ     (妙法ヶ岳)

蜂の巣にみんな思ひ出ありにけり

曼珠沙華一斉に立ち我頓挫

冬の山気長な人に巡りふ        (西沢渓谷)

ふはふはと遊んで蛇に絶叫す

富士火口みんなが立つて虹が立つ   (富士山登頂)

白鳥へ黒い人影押し寄する       (荒川 深谷市)

脳天に雨垂れ一つ燕来る

遠花火静かな怒りありにけり

母に聞き父に確かむ枯れ野にて     (渡良瀬遊水池)

空つ風欲に人間がらんどう

山里に遅き桜や田が動く        (群馬県みなかみ町)

蟻一つ一つ光りて蟻の列   

落石に村の白梅おびえけり       (埼玉県小鹿野町)

にこにこと梅雨になじんで一老女

木の瘤は隆隆として水は澄む      (宝川)

岩面に亀虫一つ冬の谷         (入川渓谷)

青空に日輪大木に霧氷かな       (志賀高原)

草の花一つは妻が見つけけり

踏み込めば足形凍る樹海かな     (青木ヶ原樹海)

白蝶と黄蝶来てゐる退職す

風通る新居に燕生まれけり

露草は露消えてより開きけり

紅梅に雪はりんりん降りにけり

空蝉の眼光れり世は暗く         (尾白川渓谷)

山頂に風が渦巻く流れ星         (荒川中岳)

死は太く生は細細年の暮れ

燕来て我が家我が家と喋りけり

考へはまとめずに置く初明り

百歳を地上に残し鳥雲に(義父百歳)

交尾して花天牛(はなかみきり) は花の上  (群馬県南牧村)

狼はロマン狐は目の前に           (朝霧高原)

紅葉狩り鼬見しは一人なり         (奥志賀)

霜柱踏めば倒るる富士山へ          (富士山)

春光に阿修羅よ罅(ひび)は自然なり     (阿修羅・興福寺展)

雪を行き人の形となりにけり         (秋山郷)

都会なり布団を干せばかげりけり      (東京)

人がゐて自由に飛べり鬼やんま       (観音沼・福島県下郷町)

人はいい人間はいや寒雀

被災地の咲きたる梅に寄りにけり      (東日本大震災)

新緑や野兎跳んで富士浮かぶ        (猫越岳)

真ん中に冬の蠅ゐて宴かな

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