2018年2月18日

句集『羽後残照』武藤鉦二(むとう しょうじ)


略  歴 武藤鉦二(むとう・しょうじ)
昭和10年  12月 秋田県生れ
昭和30年  西東三鬼により俳句入門 34年F断崖」同人
昭和37年  金子兜太に師事「海程丿入会 39年「海程」同人
昭和48年  秋田県俳句懇話会「作家賞」受賞
昭和52年~ 現代俳句協会員
昭和58年  昭和57年「合歓」賞受賞
平成2年  秋田県国語教育研究賞受賞
平成11年  しらかみ句会設立 「しらかみ」創刊
平成13年~ 海程秋田支部長
平成13年~ 14年 秋田県現代俳句「作家賞」2年連続受賞
平成15年  第4回「海程会賞」受賞
平成15年  句集「羽後地韻抄」(うごちいんしょう)上梓
平成16年  第29同・平成15年度 秋田県芸術選奨受賞
平成16年~ 北羽新報新春文芸俳句選者
平成18年~ 秋田魁新報「さきがけ俳壇丿選者
平成19年  第41回「海程賞」受賞
平成21年  秋田県俳句懇話会「作家賞」受賞
平成23年  第43回秋田県芸術文化章受章
現  在  「しらかみ」主宰「のしろ俳句の会」指導、
                   「海程」「合歓」同 人
      秋田県現代俳句協会会長  海程秋田支部長

      秋田魁新報「さきがけ俳壇」選者 

帯  金子兜太

  岩と土:の重層する暗部の粘り強さとともに善意でユーモアに富む明るい資質が十分に諧謔を賞味させてくねることが貴重と思う。双方の特徴が融け合って溢れ出す感性の豊かさ。諧謔含みの乾いた具象感が「奥羽山脈のどてっ腹に過ごした」時代をも韻かせている。

 自選十句より
  尺蠖の輻に写経の母います
 雲跟野や沼守の名が沼の名に
 鬼太鼓の不意のの打止め夜の蝉
 掻いて雪掘ってまた雪絵ろうそく
 はらからやひよこひしめく箱運ぶ
 父の掌に雪の径あり山河あり
 だまし絵のなかのふくしま夕桜
 収縮も弛緩も飽きてなまこかな
 氷柱にも念力津軽あいや節
 鬼になれる器でもなし夕ざくら




 跋   『羽後の韻きのなかに』   船越みよ
 
平成十五年、武藤鉦二は句集「羽後地韻抄」を上梓された。以来今日まで羽後の大地に足を踏ん張り、五感を研ぎ澄ませ、大地の韻きを聴く歩みは一貫して変わっていない。
 金子兜太先生が「岩と土の重層する暗部の・・・・・自然や暮らしの中に溶け込む風土感を粘り強く詠み続けている。と

  なまはげ待つ顎一列に火照るなり

 二月に行われる男鹿半島の「なまはげ柴灯祭」。篝火の中、手に松明を持ち、雪の降り積もった山道をなまはげが下りてくる。
暗闇に炎と火の粉、勇壮ななまはげが浮かび上がり幻想的で迫力がある。ここでは、なまはげを迎え待つ人々の顎に視点を注いでいるのが眼目。迎える人々の熱い情熱と昂揚感。一列に並ぶ顎の火照りが勇壮ながらも神の力ゆえか、何か温かいものを感じさせ。                           `

 蕗茹でる羽後一国を噴きこぼし
 湯殿山ゆく漢のふくろうことばかな
 仏飯を撫でおり雪の故山かな
 苗床と寝床分厚き盆地かな
 半島の鬼踊りかな棚田掻く
 鶏抱いて男飛び出す雪階
 雪の半島馬の涙の匂うなり
 大寒や牛逆らわず従わず
 馬産地のいま馬在らず濁り酒
 踏ん張って兜太の墨痕かぶとむし
 火渡りなり彼岸を鷺の歩くなり
 色鳥の木かあり老いの地平あり
 裸木に耳あり残照のふくしまなり
 体当たりして春光の支流かな
 百日紅百日寝屋へこぼれけり
 収斂も弛緩も飽きてなまこかな
 葱折れぬように転びし男かな
 野火走りその先をゆく父だった
 鶏小屋の父のばたつく残暑かな
 父の背をたどれず喝と獅子頭
 情っ張りの父の木蝉を抱いている
 どぶろくの上澄みに父あらわれる
 父は雪嶺母を攫ってゆきました
 此処ここと鶏の寄りくる母の咳
 出遅れの白鳥母はお辞儀ばかり
 まんさくちりちり母の呼び鈴鳴り出した
 逝くまでの風筋太き青田かな




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