2018年2月18日

句集『身体期』 佃 悦夫(つくだ えつお)


著者略歴   佃 悦夫 

昭和9年9月22日生まれ
昭和44年   句集『空の祭』刊
昭和51年   第23回現代俳句協会賞受賞
昭和52年   『佃悦夫句集』刊

現在
現代俳句協会新人賞選考委員
NHK学園俳句講座講師
小田原俳句会会長
「海程」編集同人
 
あとがき 
俳句を始めた動機は、高校文芸部の顧問が俳人だったことによる。五十余年前のこの出会いが、この道一筋に繋がることになった。 以来、何誌かを経て、「海程」二号から一句組として入会。
齢七十になって今日まで、師・金子兜太の鞭撻を受けつづけている。作品の配列は制作発表順とした。私の俳句観を縷々述べるつもりは無い。作品がすべてである。
 この句集の出版にあたり、角川文化振興財団の中西千明氏に大変お世話になったことを特記しておく。


平成16年7月            佃 悦夫
淋しめば天井落ちてくる山国
緑陰にあそぶ心臓は華なり
冬の山あるいは暗黒装置であり
相模じゅうにしたたる朝日獲物とす
青田かな大暗黒の畳かな
人体は朝日の独壇場と化す
綿虫や胴体はいとしかりけり
新しき劇場である冬の海
身体は山霧であり金剛であり
青蜥蜴息を殺した華である
むかでげじげじまっくらやみの機械である
冬河原渡れば必ず鉄格子
長き夜が剛犬をひきずってくる
春惜しべく電球に炎を入れる
大寒やおら銀屏風起ちあがる
鬼神らの夕餉まる見えのあずま
朝日の刺す朴の一体ありにけり
雛段の流血を享く枕許
大僧正然と大黒柱夏
ブラックボックスの静寂を曳き芋虫は
心臓の構造である夜店かな
弔いや塩より白き息をせる
胴体が頭を運ぶ良夜なる
秋虹ををきれいな呼吸と言いぬ
玉虫を造る装置を探しけり
植田ほど大きな器無かりけり
くらやみの棘集まりて海胆である
初夏や母も美田も横たわる
銀河系源流より妻嫁して来しか
くちなわと血肉の間柄である

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