2018年2月18日

句集『八月の橋』水野真由美(みずの まゆみ)


風の花冠文庫4 発行所 鬣の会   定価 1,000円
略 歴
1957年群馬県前橋市生まれ。和光大学人文学部文学科卒業後、同市にて古書店・山猫館書房を営む。85年金子兜太に師諷その後「俳句空間」新人賞準賞、海程新人賞。俳句誌「未定」、「吟遊」に入会、後に退会。2001年俳句誌「鬣TATEGAMI」を林桂、佐藤清美らと創刊。句集『陸封譚』(七月堂)により第六回中新田俳句大賞受賞。
エッセイ集『猫も歩けば』(山猫館書房)。
共著に『燿-『俳句空間』新鋭作品集』(弘栄堂書店)、
『海程新鋭集2』(海程新社)、『現代の俳人101』(新書館)、など。
現代俳句協会会員、「海程」同人、「鬣」TATEGAMI」編集人。
2008年5月より朝日新聞群馬版・「上毛俳壇」選者。

金子 兜太
真面目な人間である。不真面目な人間である。

暮尾 淳 (詩人)
水野真由美さんのお酒の酔い方や俳句はイノセントで不思議なバランス感覚が潜んでいる。それは摩訶不思議の域に入ってきたようだ。真っ当な批評の眼がいつもどこか瑞々しい。

林  桂 (俳人)
水野さんの俳句は、ネットワークの装置である。


  自選句

  八月の橋を描く子に水渡す

  泳ぎ着けぬ兄見あまたゐて秋津島

  橋渡る腕(かひな)に風の図鑑あり

  修司忌は達し逃げ馬逃げられず

  木のあらば一本の櫂削るべし

  鳥旗町の風呂屋に春を愁ひをり

  揺れてみる弥生の空のやじろべゑ

    水の肖像

  榛(はん)の木の揺れて無人の駅舎なり

  街灯の光りのなかに眠る子よ

  八月の橋を描く子に水渡す

  黄落の階段までを父とゆく

   風の往来

   一対の耳置きて去る朝の岸

   笑ひ澄む翁や雲の番してをれば

   春の鳥な鳴きそ水底の村に日入りぬ

   人といふ文字立ちてゐし風明かり

   天を墜つ船には空(から)の小鳥籠

   どの坂も剥がれしのちを芽木光る

   父の忌の月の光りを噛みふくむ

    海、音符を拾ふやうに

   風喰(は)みて少年は老ゆ水の秋

   月の光りを捲き上げ運河管理人

   硝子器へ星の匂ひを採集す

   母の木よ光に遠く梢を揺らし

   楽師らや膝曲げて風の環(わ)を抜けり

   地図帳のどの頁にも水音す

   風明かりして眠る族(うから)よ冬運河

   空は本めくれば祖父の指の跡

    厩橋を過ぎてまだ

   花野より持ち帰りきし貌(かほ)なりぬ

   草の穂へ継ぐ言の葉に風暮れぬ

   あづまはや青北風(あをきた)の遊ぶ姉の空

   橋にゐるいまだ木霊は幼くて

   萩咲くや手巻時計の音の中

   茨の実ふふむや星の昏かりし

   橋渡る腕(かひな)に風の図鑑あり

     

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