2018年2月17日

句集『曜 野』柚木紀子

句集『曜 野』柚木紀子(ゆき のりこ)

角川書店   定価2667円
≪野≫は詩人が聖なる≪声≫を聴く場。
天体も花鳥も≪光てふ識閾≫をことさら詠もうとし・・・・一句一句から≪死から生を見るもの≫でありたかったら

著者略歴

柚木紀子(ゆき のりこ)本名 小木曽紀子
昭和八年十二月二目 東京生れ
昭和十九年 神奈川県鵠沼・群馬県館林・長野県軽井沢に疎開
昭和二十年 父・正田順四郎戦災死 叔父・原正路叔母・原筆子・広島にて原爆死
昭和三十一年 東京女子大学文学部英米文学科卒業
昭和三十七年 山口青邸より『夏草』新人賞受賞
昭和六十年 金子兜太より『海程』新人賞受賞
平成三年 第三十七回角川俳句賞受賞
句集『名なき目』『岸の黄』『麺麹の韻』『鹵凡(ろぼん)』
『ミスティカ』日本文藝家協会会員 俳人協会会員 元国際俳句交流協会会員

自選十二句
虹顕(た)つや海汲みつくさむと幼な
昼と言做(いひな)さるる光葡萄垂る
短夜の問ひつめ合うて双耳峰
夏至満月さきをととひの森の上
太初(はじめ)からそこに笛方秋夕焼
羽黒山肺葉ふかうつめたうし
内陣を窺ふごとし露の玉
水面てふ識閾(しきゐき)残(のこ)んの百日紅
全円の地平真芯に葡萄剪る
従容(しょうよう)と山河ありダイヤモンドダスト
冬銀河灌(そそ)ぎ出さるる途中かな
粥柱もつともあたらしい記憶

「玻璃光の雪迎」より抜粋
くれなゐを零(こぼ)さじと鶴来たりけり
璃光の蜘蛛の括(くび)も雪迎(ゆきむかへ)
逢はざりし空白ひらき冬襖(ふゆぶすま)
やはらかく大牙(だいが)を擁(よう)し冬怒濤
幹はわが舷(ふなばた)ぬくと十二月
転舵(てんだ)してひといろの冬はろけしや
舟待つや翁(をう)偏愛の初しぐれ
雲籠(くもご)めの舟な沈みそ大根(だいこ)の荷
一夜に発つ穢土(えど)なみれなる雪兎

兜太師、スウェーデン・チカダ賞受賞、平成17年12月14日平和と人間の尊厳を詠う詩人に与えられる賞。日本への原爆投下が核となる詩集「チカダ(蝉)」(スウェーデンが誇る世界的詩人ハリー・マッテンソン作)に因む賞。

棕櫚陰の兜太に后(きさき)あゆむ冬
各(おの)も 各(おの)も燭(ともしび)胸に枯野来し
額(ぬか)上げよ純白の修羅(しゅら)氷瀧(こほりだき)
ひとつ家に立つ木菟(ずく)の耳猫の耳
たれかれに離(さか)りてねむる花八ッ手
杭打ちてうちがはに暾(ひ)の霜 柱
曜野(えいや)慕ふ王のかなしび冬雲雀



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