2018年2月25日

「海程句集」金子 兜太


「海程句集3」平成24年 金 子  兜 太

左義長や武器という武器焼いてしまえ

差羽帰り来て伊良湖よ夏満ちたり

夏の猫ごぼろごぼろと鳴き歩く

老母指せば蛇の体の笑うなり

長寿の母うんこのようにわれを産みぬ

定住漂泊冬の陽熱き握り飯

熊飢えたり飢え知らぬ子ら野をゆけり

病いに耐えて妻の眼澄みて蔓うめもどき

合歓の花君と別れてうろつくよ

言霊の脊梁山脈のさくら

今日までジュゴン明日は虎ふぐのわれか

マスクのわれに青年疲れ果てている

わが修羅へ若き歌人が醉うてくる

津波のあとに老女生きてあり死なぬ

今も余震の原曝の国夏がらす

被曝の牛たち水田に立ちて死を待てり

被曝福島米一粒林檎一顆を労わり

泣く赤児に冬の陽しみて困民史

東京暁紅ひたすらに知的に医師たち

樹相確かな林間を得て冬を生く

海程同人10句掲載リンク
海程同人50周年アンソロジー 名前 あ~か
海程同人50周年アンソロジー 名前 さ~た
「海程第2句集」平成14年 金子兜太
梅雨の家老女を赤松が照らす
少年二人と榠樝六個は偶然なり
小鳥来る全力疾走の小鳥も
酒止めようかどの本能と遊ぼうか
二階に漱石一階に子規秋の蜂     愚陀仏庵
長生きの朧の中の眼玉かな
夏落葉有髪(うはつ))も禿頭もゆくよ
青春が晩年の子規芥子坊主
春落日しかし日暮れを急がない
よく眠る夢の枯野が青むまで
鳥渡り月渡る谷人老いたり
妻病めり腹立たしむなし春寒し
雪中に飛光飛雪の今(いま)がある
暁暗を猪やおおかみが通る
おおかみが蚕飼の村を歩いていた
おおかみに螢が一つ付いていた
おおかみを龍神(りゅうがみ)と呼ぶ山の民
龍神の障(さえ)の神訪う初景色
山鳴りときに狼そのものであった
月光に赤裸裸な狼と出会う


「海程句集1」昭和57年  金 子  兜 太
霈の村石を投うらば父母散らん
どれも口美し晩夏のジャズ一団
無神の旅あかつき岬をマッチで燃し
三日月がめそめそといる米の飯
人体冷えて東北白い花盛り
犬一猫二われら三人被爆せず
暗黒や関東平野に火事一つ
霧に白鳥白鳥に霧というべきか
富士たらたら流れるよ月白にめりこむよ
あきらかに鴨の群あり山峡漂泊
梅咲いて庭中に青餃が来ている
山国の橡の木大なり人影だよ
旅を来て魯迅墓に泰山木数華

「海程句集」は金子兜太・同人・会員全員のアンソロジーとして自費出版されたものです。創刊50周年までに3冊出されています。



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