前 川 弘 明
船笛やすずなすずしろ朝の家
水平線のように朝寝をしておりぬ
花の雨ガス管に家つながれて
トランプはみな開かれて鳥の恋
桜狩いつか死ぬ人ばかりくる
夕顔や馬は毛深き首を垂れ
飛込みのながき一瞬雲の峰
八月の水ふっかける被爆坂
月光に鶴の絵本を置いておく
猪の眼の玲瓏なれば撃たれけり
前 田 典 子
蝶一双水のひかりを縒り上ぐる
村の葬どんじゃらじゃらと陽炎へり
青嵐乞はれて母を抱(い)だきしこと
まむし草漢ふたりが見せにくる
狐出てまぶしき青葉しぐれかな
高僧に母霧に山肌ありにけり
黄菊白菊どのバンザイも嫌ひなり
塹壕のまだあたらしき霧の音
鷹一つまばたくや崎かがやけり
澄む水の核につながりゆく無音
船笛やすずなすずしろ朝の家
水平線のように朝寝をしておりぬ
花の雨ガス管に家つながれて
トランプはみな開かれて鳥の恋
桜狩いつか死ぬ人ばかりくる
夕顔や馬は毛深き首を垂れ
飛込みのながき一瞬雲の峰
八月の水ふっかける被爆坂
月光に鶴の絵本を置いておく
猪の眼の玲瓏なれば撃たれけり
前 田 典 子
蝶一双水のひかりを縒り上ぐる
村の葬どんじゃらじゃらと陽炎へり
青嵐乞はれて母を抱(い)だきしこと
まむし草漢ふたりが見せにくる
狐出てまぶしき青葉しぐれかな
高僧に母霧に山肌ありにけり
黄菊白菊どのバンザイも嫌ひなり
塹壕のまだあたらしき霧の音
鷹一つまばたくや崎かがやけり
澄む水の核につながりゆく無音