2017年4月30日

兜太の自句鑑賞

麦秋の夜は黒焦げ黒焦げあるな          『詩經國風』
麦秋の野面は、夜ともなれば黒焦げの感じで、そのひろがりは無気味でさえある。
私は原爆投下された広島、長崎を直ちに想い、戦時中そこにいて、戦場の惨状を
体験した赤道直下のトラック島を思っていた。二度とあんな悲惨なことがあって
はならないとの願い。


どどどどと螢袋に蟻騒ぐぞ            『詩經國風』
原や山道を歩いてゆくと直ぐ、路傍にこの淡紫色の花を見受ける。釣鐘形で
なんとなくずんぐりしていて、下向きなので、解説本などは提灯(火垂る)
に似ていると説明し、歳時記には、子どもがホタルをこの花に入れて遊んだ、
と説明したりしている。私はホタルが花のなかに自分で好んで入り込ん
だと想像し、更にはホタルでなく蟻がおもしろい。蟻のやつ、喜んで騒い
でいるぞと思いなおして楽しんでいる。「どどどど」騒ぐ感じの擬音語。
これが得意。


牛蛙ぐわぐわ鳴くよぐわぐわ       『皆之』
武蔵の熊谷に住みついた頃は、横の小川で牛蛙が盛んに鳴いていた。高度経
済成長の半ばで、いまでは小川の左右すべてが住宅化し、いつのまにか牛蛙の
声がきけなくなってしまった。泥水を喉のあたりに溜めて、転がしたり、吐い
たりしているような鳴き声が懐しい。
「ぐわぐわ」と擬声語にちかいことを掴んで大喜び。私の俳句仲間に、この句
を囗遊びながら歩きまわる男がいる。

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