2015年11月3日

句集「黒猫」金子皆子


黒猫  昭和五十六年卜六十年

つらら剣(つるぎ)もまんさくの花も透明
芽明りと灯りとひとつ姉妹のような
附下の孫ら眠りに花か水鳥か混る
木の芽たち黒猫もの言って老いる
まんじゅしゃげ亡母(はは)に身近な時間の赤の
紅葉山朝日は孫の獅子頭
黒猫と松毬(まつかさ)羽をおとしてみる
山繭の薄緑の時間なのだから
夏星よ黒猫百歳の耳立て
むかしむかしがありぬ令法(りょうぶ)の花盛り
蒿雀(あおじ)を追ってみよ友よ失いしもの
魚みている静かな黒猫と草の実
土佐は不思議天上に豆の花溜める
照葉樹林帯に青貝を煮る囗
山襞にあり巡礼の鈴怖し
走って分れる茜夕空姉妹と思う
旅近し葱の匂いの冬月と思う
臣木ユーカリ旅のねむりに白葉騷
梨花巨木あひるといて泥の老婆よ
木綿花(もーめんほわ)の花夕焼の五臓なのか
水牛と少女水牛と青年の広漠
疲れ寝すこし滴江の春の水になる
菜の花大陸曳船に裸火と男
黄濁は日常林檎赤き小粒
ジャスミン茶口中にあり私は休む
桐の花仏身に呼びかけるかな
うっぎ咲く黒猫うっぎの夢の中
帰郷(きごう)とはりょうぶの花の白房にあり
 犬チャーの死
犬死にゆきひぐらしの帽みなかぶる


0 件のコメント:

コメントを投稿