2016年2月20日

金子兜太の世界 魅力とは

角川・平成21年刊

金子兜太の魅力   <アンケート>

相原左義長・・・愛媛県現代俳句協会名誉会長

1.酒やめようかどの本能と遊ぼうか
はじめて愛媛県海程人を秩父俳句道場に出席させた時出合った
兜太先生の句であり、大いに問題になった句である。

2.夏の山国毋いてわれを与太と言う
昭和二十年末復員した私を見て、母は「与太者」と言った。
「与太」「与太者」という言葉で母は息子の「侠気」に少な
がらぬ信頼を寄せているのである。

3.黄のタオル春陰三日ほどつづく
本年五月はじめのNHK俳句王国で兜太先生か主宰で、主宰者の
出題「春陰」の句である。兜太師の最近作であり、新たに加えた
私の感銘句である。

2016年2月16日

句集 「火蛾」 藤野 武

著者略歴
藤野 武(ふじの・たけし)
1947年 東京都五日市(  あきる野市)生まれ
1984年 「海程」入会、金子兜太に師事
1999年 「遊牧」創刊に参加
1990年 海程新人賞受賞
1992年 第三八回角川俳句賞受賞
2008年 海程賞受賞

現在「海程」「遊牧」同人、現代俳句協会会員
句集『気流』、合同句集『海程新鋭集I』 

 帯
  この二十余年の間には、公私ともに様々な出来事があった。これら日常・非日常のあれこれが私の俳句の拠りどころである。
 母や義母、弟や義兄たちが逝き、無二の友や俳句の友人・先輩たちとの別れもあった。これら亡くなられた方々(すでに八二年に亡くなっている父も含め了の鎮魂がこの句集の中心的なモチーフの一つなのだ(そして彼らは、私の俳句の中に今も時々、優しき相貌で立ち現われてくれる)。
 私の退職、娘の結婚、二人の孫の誕生もあった。老いがいやおうなく、ざわざわと訪れてきている。

2016年2月14日

兜太句を味わう 髭のびててっぺん薄き自然かな

 



  髭のびててっぺん薄き自然かな       兜太

 頭髪が薄くなりはじめたのは四十代の初めごろだった。「十月の木の葉髪」というように、陰暦十月(初冬)には、木の葉と同じように髪の毛もよく抜け落ちるといわれている。

初めは、これだろうとおもっていたのだが、正月を越し寒の内になっても止まらない。寒さがひとしおこたえて、「頭寒足熱」などとしゃれているひまはない。
そうこうしているうちに、ついに、額から頭のてっぺんまで禿げあがり、まわりに毛を残すだけの〈総退却型〉が完成してしまったのである。

 気付くと、こころなしか髭のほうが濃くなっていた。頭髪が薄くなり、髭が濃くなる。これが自然というものだと、やがて自分で納得するまでには少し時間がかかったのだが、この思い入れにかなりの満足感があったことも事実である。

この句ができて、知り合いの和尚に見せたところ、かれはこういう。人間の体全体の毛の数は減らない。頭で減った分だけ、どこかでふえているはずで、髭もその現れだが、髭ていどでは足りないから、わきの下とか下腹部で増加しているはずだ、と。

なぜ減らないのか、と尋ねると、人間は猿より毛が三本多い動物である。だから、うっかり減ってしまったら猿になっちまうぜ、とうそぶくのである。真偽不明ながら、他がふえたことは間違いなさそうだ。

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