2015年12月3日

「兜太」句を味わう「若狭乙女・・・」 「定住漂泊・・・」


若狭乙女美し美しと鳴く冬の鳥            金子兜太
(わかさおとめ はしはしとなく ふゆのり)

冬、若狭湾に臨む小浜に泊ったときの作。湾は波立ち、鴎が、じつにと言いたいほどにたくさんいて、漁港の冬をつよく感じさせられた。そしてその景のなかで働く若い女性たちが美しかったのだが、とくに鴎の鳴き声が「美し美し」ときこえたのは、旅情のせいもある。しかもこのことばをとくに遣おうとしたところに『詩經國風』によって養われた下地
があったためと思ってもいる。     (『詩經國風』)

定住漂泊冬の陽熱き握り飯           金子兜太
(ていじゅうひょうはく ふゆのひあつき にぎりめし)

人は自分たちでつくってきた社会でなんとか生きてゆこうとして(「定住」をもとめて)苦労している。そのためかえって、原始の、アニミズムの世界を良き「原郷」として、そこに憧れて、こころさまよう。「定住漂泊」こそ社会生活を営む人間の有り態と、私は考えていて、いま冬の陽を浴びて握り飯を食いながらも、そのことを思っている。そのせい
か冬の陽ざしが妙に熱い。私自身その有り態にこだわり、いるゆさぶられて       (『日常』)

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