2015年5月13日

兜太句を語る「飯食えば蛇来て穴に入りにけり」


飯食えば蛇来て穴に入りにけり           兜太

 飯を食べていたら、まるでそれが合図のように蛇がするするとやってきて、穴に入った、ということだが、じっさいは、食事中に偶然、秋の蛇を見ただけのことで、誇張である。

 しかし、このとき、自分という人間も蛇も同じ自然界の生きもの、飯を食うことも穴に入ることも同じ生のいとなみ、というおもいにとらわれて、生きものどうしのえもいわれぬ親密感のなかにいたことは事実だった。そのための誇張である。

 蛇は秋もふかまると穴に入って冬眠する。数匹から数十匹が寄りあつまり、からみっているという。穴に入らないのもいて、穴惑いという季語もあるが、わたしの見 たのは
それだったのかもしれない。

 とにかく、蛇は不気味かつ不思議な生きもので、嫌う人が多い。ことに女性の俳句で蛇が好きだとかいたものに出会った記憶がない。
 しかしわたしは蛇が嫌いではない。とくに机の引き出しなどで飼う気はないが、石をぶつけて追いはらう気持など毛頭ない。

 小学低学年のころ、ヤマカガシだったか手に巻きつけて、担任の女性の先生の前にぬっと差し出して、親しみを示したことがあった。先生はぎよっとして身を引いたあと、あらかわいいわね、といったのだから、あんがい蛇好きだったのかもしれない。いや、教育のためのご配慮だったのかももしれぬ                     

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