2015年8月1日

金子兜太句集『猪羊集』

第9句集『猪羊集』 1982年刊 「昭和57 昭和57 1,300円 


昭和五十七年 現代俳句協会・現代俳句の100冊[10]
現代俳句協会にあります。
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山国の橡の大木なり人影だよ 
日本海に真冬日あらん山越えれば
さすらえば冬の城透明になりゆくも
春の航夢にがぶりて鱶の腹
荒天の高知菜の花粉微塵(こなみじん)
鮎食うて旅の終りの日向ある
一舟そこにさすらうごとしこおなご漁
夏は白花(しろはな)抱き合うときは尻叩け
朝の星黄金虫標本室は彼方に
食べ残された西瓜の赤さ蜻蛉の谷
道志村(どうし)に童児山のうれしさ水のたのしさ
死火山屋島菜の花どきはかもめかもめ
空海幼名は真魚(まな)春鴎くる内海
えんぶり衆白き夜雲の田へ帰る
桃の里眼鏡をかけて人間さま
桃の村からトンネルに突込む塩気
新墾(にいはり)筑波胡瓜はりはり噛めば別れ
立山や便器に坐禅のような俺が
黒部の沢真つ直ぐに墜ちてゆくこおろぎ
 




後記  『猪羊集』   金子兜太
       
猪は山国の名物、私が末(ひつじ)ということで、猪羊集
という題をひねりあげた。山国育ちの羊の句集ということである。

内容は、過去の句集九冊(未刊句集二冊を含む)から旅の
句中心に好きな句を抄出し、それに、その後にできた旅の句を加えるかたちをとった。思いかえしてみると、兜太百句式の自選句集で手軽なものが、『戦後排句作家シリーズ』(海程戦後の会刊)の兜太集以後なかったのである。
あれは十五年以上も前の刊行で、すでに絶版になっている。その後に出たものは形が大きい上に部数が少ないから、とても手軽とはいえないし、近刊句集の句がはいっていない。

 旅の句に執着したのは、旅の句が好きということと、
ここ十年くらいは旅で得た句が圧倒的に多いことによる。なお、抄出に当って表記を修正したものがいくつかあるが、この句集のものを決定版としておきたい。


解説・海程同人 安西 篤(金子兜太集第一巻より転載)

付・後記 (著者エッセイ(俳句によせるおもい)
(守武のこと俳諸のこと))/
解説 (「金子兜太句集『猪羊集』に寄す」山田みづえ)/「金子兜太年譜」/ 「金子兜大著書目録」/「あとがき」総頁260頁、判型・ B6判、造本・並製カバー装、
装幀・上口睦人、口絵二頁(写真・田沼武能)発行・1982年7月20日初版、発行所・現代俳句協会、「現代俳句の一〇〇冊」 シリーズ10

『猪羊集』は、第一句集『少年』以降『遊牧集』にいた
るまでの九冊(未刊句集二冊を含む)のなかから、旅の句中心に抄出し、さらに『遊牧集』以後の旅の句76句を加えたもの。本句集全体は278句を収録しているが、ここでは重複を避けて、『遊牧集』以後の
76句のみを収めた。

「あとがき」によると、題名の由来は「猪は山国の名物、
私が未歳(ひつじ)ということで、猪羊集という題をひねりあげた」という。好評を博した旅吟のアンソロジーである。
 

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